2008年05月01日

安田誠さんの戦場体験

証 言:安田誠さん 1923(大正12)年生まれ
取材日時:2008年4月29日

 フィリピン・ルソン島の体験談を伺うと、安田さんのおられた
第4航空軍のお話は他の部隊の方からもよく耳にする。
第4航空軍は、米軍がフィリピンに上陸するや
司令官富永恭次中将が逃亡した部隊だからだ。
「司令官を無くし、航空兵なのに装備も訓練も無いまま歩兵に組み込まれ、大変多くの方が亡くなった。本当に気の毒な部隊だった」と。

しかし、安田さんのお話は少し違っていた。
「北上する道々他の部隊の兵から『お前達は兵隊じゃない。』
『お前達は兵隊じゃない。』」と随分言われた。
『だってオヤジが逃げたじゃないか。』と苛められた」と。この日はボランティア講習会。午前中は本格的聞き取りは初めてという方達も加わって、体験談を伺った。写真はまさしく老若男女の図。

安田誠さんは、

 ▲1944年(昭和19年)4月1日 現役入営 第7航空通信連隊(三重県多気郡)
 ▲ 同年 12月31日 マニラ港上陸  第4航空軍司令部暗号班配属

1945年(昭和20年)1月9日、米軍がリンガエン湾上陸したため北部ルソンに向け撤退。
問題の富永中将逃亡は1月16日。
夜間のみ徒歩で336キロを移動、1月26日 北部ルソン・サンチャゴに到着すると、この話はあっという間にどこからともなく伝わっていて、皆が知るところとなっていた。
「自分たちは文字通り幽霊部隊になった。」

しかし、本当に安田さんが大変だったのは「5月半ば以降、山中に入ってから」。
 ▲5月2日 バレテ峠の鉄兵団援護のため南下の命令
10人弱の分隊に、小銃が2丁しか無い。行って何が出来るのかと思ったが、命令なので行かねばならない。机上で員数だけ動かせば戦力があるかのように見せる軍隊の“員数主義”だ。
 ▲6月初頭、アリタオ東方コモンに到着すると「鉄兵団も、もう撃破されているので好きにしてくれ」と言われる。

 ▲シエラマドレ山脈のジャングルに入る
◎食べられるものは草でも虫でも何でも食べた。
革靴もあるものは皆で煮て食べ尽くしたが、鋲が打ち付けてあるのを引き抜くのに苦労した。
塩の欠乏には特に苦しんだ。
◎人肉を食べている光景は2度見かけた。

◎部落に食糧を取りに行く、こちらに渡すものが有るわけではなく強奪した。
部落民は山に逃げていて家は空、家中手当たり次第籾など食べ物を探しまわったが、住民も上手に隠していて簡単には見つからなかった。
◎ある部落で強奪に入ると何処からか子供の泣き声がする。さとうきびを煮る大釜の下に逃げ遅れた女性と赤ん坊がいた。女性を殺した。赤ん坊も殺せと言われたが誰も手をつけようとしない。結局そのまま置きっぱなしにした。
その女性の夫が山から降りてきたので、縛って歩かせ道案内をさせようとしたが、部落を中心に毎日同じ所を歩き続ける。その事に何日か誰も気付かなかったが、やがて彼も殺した。

◎部落を見つけて二日ほどいるとどこからか連絡が行き激しく爆撃が始まる。ゆっくり落ち着きたければ若い者は見つけたら殺すしかない。下士官達は「俺たちは満州や中国で何人も殺してきたのだから、お前達がやれ」と必ず一番下の若い兵隊達にやらせた。

◎毎日道端に10人ほどの死体を見かけたが、感覚的に何かを感じることは無くなっていた。

 ▼6月15日 右足脛に貫通銃創、蛆虫を使って治療した。
動画はその時のお話です(準備中)。

 ▲8月5日 ピナカバン(現マデーラ)到着
 ▲8月末
敗戦を知らせるビラが撒かれたが誰も信じるものが無かった。捕虜になってはいけないと徹底的に叩き込まれていたからかもしれないし、負けるわけがないと思ってもいた。今になれば、あれだけひどかった空爆が無くなったのだから気付いてもよさそうなのだが。
 ▲9月半ば 敗戦を知る
米軍のトンボの様な飛行機がまわってきて、少佐がメガホンで敗戦を伝えた。これで初めて敗戦を信じた。

 ▲9月17日 武装解除
 ▲バダンガス捕虜収容所へ
トラックで運ばれるときフィリピン人から罵声がとび、石を激しくぶつけられた。収容所には演芸大会などもあり自由な雰囲気だった。

▼1946(昭和21)年12月31日 佐世保港に復員
▲最終階級 兵長

貫通銃創であった事を安田さんは幸運だったと繰り返された。そう言われても「当たらない」という選択肢もあるようで、俄に「そうですね」とも言いかねるが、確かに元兵士の方は皆、貫通している方が助かると言われる。
実際に第4航空軍に派遣された同期兵63名のうち生還されたのは5名、現在生きておられるのは安田さんを含め3名のみである。


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